Abstract : |
当施設でCABGを施行したLVEF 30%以下の低左心機能症例27例(緊急手術17例, 待期手術10例)について検討した. 両群共心筋梗塞の既往を高率に認め, 著明な左室容量拡大を伴い, 完全閉塞枝を伴う重症多枝病変例が症例の中心となった. 緊急手術と待期手術例の比較では, 前者で有意に高齢(p<0.01)で, 術前より高頻度にIABPを要した(p<0.01). 前者の58.9%, 後者の90%に201Tl心筋シンチグラフィーを術前に行い, CABGの適応性を確認した. 手術は逆行性低温血液持続冠灌流法を主体に用い, 完全血行再建を目標として平均2.37±0.79本のグラフトを作製した. 緊急手術の2例にMAP, 待期手術の2例にVTに対する凍結手術を追加した. 緊急手術例は17例中8例(47.1%)が院内死したが, 待期手術例は全例生存した. MAP追加例は2例共死亡したが, 凍結手術例は2例共生存した. 生存例における術前後の安静時心機能検査の比較では, 待期手術例のLVEFが術後有意に改善し(p<0.05), 両群を通じて, 術前LVEF 12%の緊急手術の1例を除き, 他の18例はNYHA I, II度に復した. 以上よりLVEF 30%以下の低左心機能症例においてもCABGは有効であり, 術前の安静201Tl心筋シンチグラフィー遅延像による心筋viabilityの評価, 術中の逆行性低温血液持続冠灌流法による心筋保護, VT起源検索に対する術中ペースマッピング法等はそれぞれ有用であった. |