Abstract : |
われわれは熱電対を内蔵したアンチモンpH電極に直接心筋活動電位(MEA)測定用刺入型電極を組み合わせた臨床応用可能な電極を作製し, 高カリウム心筋保護液による心停止中の心筋温, 心筋pH, 直接MEAの変化と, 再灌流後の心機能との関係を検討し, 術中心筋保護評価モニターとしてのこれらの指標の有用性を検討した. 成犬20頭を用いて30℃体外循環下に上行大動脈を2時間遮断し遮断解除30分後と遮断前の左室仕事量との比を回復率とした. 実験犬を心筋保護法により, I群(6頭):4℃高K晶質性心筋保護(CP)液30分毎間欠的注入, 局所冷却併用せず. II群(4頭);初回のみCP液大量注入, 局所冷却併用せず. III群(5頭);同CP液にlidocaine 100mg/l添加したものを間欠的注入, 局所冷却併用せず. IV群(5頭);I群と同じCP組成, 注入法だが局所冷却併用, の4群とした. 心筋温8℃以下の例の心機能回復率(72±21%)は15℃以上の例(28±30%)に比し有意に良好であった. 大動脈遮断中心筋pH変化ΔpHと心機能回復率に有意の相関はなかった. 大動脈遮断中全例で直接MEAが認められ, 直接MEAで確認された心臓の活動は必ずしも通常の四肢心電図あるいは肉眼的には確認されなかった. 直接MEA発生が軽度な例の心機能回復率(68±18%)は中等度(42±18%), 高度(0±0%)に比し良好な心機能回復を示した. I~IV群では各々28±37%, 0±0%, 50±10%, 72±21%の心機能回復率を示し局所冷却, CP液間欠的注入, lidocaine添加による心筋活動抑制の有用性が示唆された. 以上から上記指標のうち特に直接MEAは術中心筋保護モニターとして極めて有用な指標と思われた. |