Authors : |
野島武久, 森渥視, 渡田正二, 尾上雅彦, 杉田隆彰, 白石昭一郎, 中嶋康彦, 田畑良宏*, 松野修一* |
Abstract : |
超低体温下逆行性脳灌流における送血波形の影響を調べる目的で, 拍動流による逆行性灌流を, 雑種成犬を用い, 実験的に検討した. 体外循環にて鼻咽頭温20℃まで冷却したのち, 両側内顎静脈からの逆行性脳灌流モデルを用い, 60分間の定常流群(n=5), 拍動流群(n=5), 循環停止群(n=5)の3群にて比較検討を行った. 逆行性灌流は, 平均外頸静脈圧を20mmHgに維持して行った. 脳組織内血流量は, 定常流群(14.7±4.3ml/100g/min)と拍動流群(16.2±4.6ml/100g/min)の2群間には有意差はなかった. 脳脊髄液圧は, 循環停止群(4.8±1.3mmHg)と比べて, 定常流群(17.2±1.9mmHg), 拍動流群(16.8±0.8mmHg)はいずれも有意に高値であった. 脳組織内ATP濃度は, 定常流群(0.110±0.026μmol/g), 拍動流群(0.132±0.033μmol/g)の2群は循環停止群(0.068±0.015μmol/g)よりいずれも有意に高値であった. 脳組織内水分量は, 循環停止群(74.2±1.5%)と拍動流群(74.8±1.1%)では, いずれも定常流群(76.6±1.6%)に比べ有意に低値であった. 逆行性脳灌流法の脳組織内ATP濃度は, 循環停止法と比較して有意に高値であり, 循環停止法の有用な補助手段と考えられた. また, 拍動流による逆行性脳灌流は, 脳浮腫を軽減することから, 定常流に比べてより効果的な脳保護効果を有する可能性を示唆するものと思われた. |