Abstract : |
109例のCABG又は人工弁置換症例を対象に“Low dose”アプロチニンを投与し, その効果を検討した. アプロチニンは麻酔導入から体外循環開始までと, 体外循環終了から止血終了まで60万KIU/hrで持続静注し, 更に体外循環充墳液に50万KIUを添加した. A(Aprotinin)群とC(Control)群(アプロチニン非投与群)で比較すると, 体外循環後出血量(A群:315.7±203.1ml, C群:484.3±598.5ml p<0.01), ICU入室後6時間のドレーン排液量(A群:273.0±210.0ml, C群:404.7±243.2ml p<0.01), 24時間のドレーン排液量(A群:510.2±248.0ml, C群:721.9±317.7ml p<0.01)はA群で有意に少なかった. 術中術後の他家血輸血使用量(A群:4.7±5.3u, C群:8.5±6.4u p<0.01)はA群で有意に減少した. 無輸血手術例数は自己血輸血非施行例では有意差は無かったが, 自己血輸血施行例ではA群:66例中40例, C群:33例中8例で, A群で有意(p<0.01)に増加した. 体外循環時間120分以上の症例(A群:40例, C群:29例)の検討でも, 手術時間, ICU入室後6時間及び24時間のドレーン排液量, 術中術後の他家血輸血使用量がA群で有意に少ないことと, 全症例についての検討で体外循環時間, 手術時間がA群で有意に短かいことより, “Low dose”アプロチニンは体外循環時間, 手術時間の短縮をもたらしたと考えられた. A群でのアプロチニン血中濃度は, 体外循環開始直前:90.7±30.7KIU/ml, 体外循環開始時:106.8±19.8KIU/ml, 体外循環終了時:49.2±18.4KIU/ml, プロタミン中和後:68.0±26.6KIU/mlで, これまで目標値とされてきた150~200KIU/mlを大きく下回っていた. この濃度でも十分な効果が得られ, アプロチニンの作用機序について更に検討が必要と思われた |