Abstract : |
心臓血管外科手術におけるrecombinant human erythropoietin(rHuEPO)投与の効果と適応について, 体外循環376症例の同種血無輸血率(無輸血率)から検討した. rHuEPO投与例は静脈内投与(100U/kg/day)と皮下投与(400~600U/kg/week)の計174例であった. 待機的手術(348例)を, 通常手術(335例)と大量の輸血が予想される再手術や大動脈手術(13例)に分け, 更に通常手術をヘモグロビン値(Hb)が12g/dl以上(292例)と12g/dl未満(43例)に分けた. 通常手術・Hb≧12g/dlでは, rHuEPO投与・貯血例とrHuEPO非投与・冷凍血貯血(長期間貯血)例の無輸血率はそれぞれ96.3%, 91.4%と高率であった. これに対してrHuEPO非投与・液状血貯血(短期間貯血)例では82.5%であり, Hb<14g/dlで自己血採取後の貧血改善が不良なために同種血輸血を要した症例が多かった. 通常手術・Hb<12g/dlの無輸血率は, rHuEPO投与例で80.6%と非投与例の25%に対して有意に高く(p<0.01), なかでも貧血が改善して貯血できた症例では91.3%と良好であった. 再手術や大動脈手術など従来は貯血の対象とならなかった症例でも, rHuEPOを投与して約2,000mlの貯血を行えば70%で無輸血手術が可能であった. 投与間隔をあけることが可能な皮下投与法は静脈内投与法とほぼ同様の効果が得られた, 以上より無輸血手術を目指したrHuEPO投与の適応について以下のように結論する. (1)通常の開心術では手術までの期間が短い場合に(特にHb<14g/dlの症例)投与する. (2)貧血例や大量の輸血が必要な症例では積極的に投与して貯血を試みる. (3)外来投与を行う場合には皮下投与を試みる. |