Authors : |
新堀耕基, 伊藤康博, 内田直樹, 秋野能久, 東福寺元久, 庄司好己, 吉田聖二郎, 田林晄一, 毛利平 |
Abstract : |
本研究の目的は高有孔性人工血管を用い, アルブミンや血液によるプレクロッテイング群(アルブミン処理群, 血液処理群)とわれわれが試作した架橋剤EX-313(デナコール)とアテロコラーゲンによるコラーゲン被覆人工血管群と非処理(コントロール群)群の間で, 内皮細胞被覆速度及び抗血栓性について比較検討することである. 実験は, 雑種成犬を用い, 全身麻酔下に胸部大動脈に各々処理した人工血管を移植した. 補助手段としてアンスロンチューブによる一時的バイパスを用いて, 左鎖骨下動脈分岐より末梢の胸部大動脈に5cmの人工血管を移植し, 移植後3ヵ月で犠牲死させた. 移植人工血管内面の内皮細胞被覆率を算出し併せて組織学的検討を加え, 各群間で比較検討した. 内皮細胞被覆率は, コントロール群84.5±4.3%. アルブミン処理群54.8±8.1%. 血液処理群66.6±7.1%. コラーゲン被覆人工血管群の5時間架橋群92.6±3.3%. 24時間架橋群84.5±7.9%で, アルブミン処理群の内皮細胞被覆率がコントロール群より有意に低く, コラーゲン被覆人工血管群のそれはアルブミンまたは血液処理群より有意に高値であった. アルブミン, 又は血液処理群では, 内皮細胞非被覆面の血栓の付着がコントロール群に比して高度で, 抗血栓性の低下が示唆され, 特に上行及び弓部大動脈領域でのこれらの人工血管の使用にあたっては, 術後早期からの抗血小板剤または血液凝固阻止剤の投与が肝要と考えられた. 試作したコラーゲン被覆人工血管は, 内皮化も早く, 抗血栓性にも優れ, 有用性が高い人工血管と考えられた. |