Abstract : |
症例は14歳, 男子. 7ヵ月時, 体重4,550gで右肺動脈上行大動脈起始症に対し径8mm人工血管を用いて右肺動脈-主肺動脈再建術を施行した. 退院後臨床症状は特に問題なかったが, 術後14年目に人工血管の狭小化と肺高血圧症を認めたため再手術を行った. 手術は径12mm人工血管による再置換術を行い, 同時にPFO閉鎖とTAPを施行した. 術後肺動脈圧の低下は良好であった. 本疾患に対する人工血管使用症例は再手術の可能性が高く, 造影検査を含めた術後長期の経過観察と, 人工血管が閉塞する前の再手術が肝要であると考えられた. 右肺動脈上行大動脈起始症はまれであるが, 乳児期早期より心不全, 呼吸不全を繰り返す予後不良な先天性心疾患であり, その治療の原則は肺血管病変の進行する前の乳児期早期の根治手術である1)~4). 1961年Armer5)が1歳の乳児症例に人工血管を用いた根治手術成功例を報告して以来, その手術報告例も散見するようになってきている. 肺動脈再建法は補助手段等の向上により直接吻合法も報告されてきているが6)~10), 心不全を伴った乳幼児に対する手術侵襲を考慮して人工血管を用いた再建術の報告が多い3)5)6)12). 一方, 人工血管使用例はその遠隔期において再手術が必要となる可能性が高いが, 遠隔成績に関する報告は少なく1)11)12), 再手術の報告もいまだない. 今回われわれは, 本症の7ヵ月乳児に人工血管を用いて根治術を行った症例に, 14年後に人工血管の狭小化, 及び肺高血圧症の再発を認め, 再手術を行い良好な結果を得たので報告する. |