Abstract : |
Stanford A型大動脈解離に対しては, 救命を第一に考え, 中枢側への解離の進展による大動脈弁逆流, 心タンポナーデなどを防止するため人工心肺装置を用いてしばしば急性期に手術が行われるが, この際通常大腿動脈からの逆行性送血が用いられている. われわれは, まれではあるが非常に重篤な合併症である偽腔送血による真腔閉鎖を来し, 送血部位を変更することで合併症なく救命することが可能であった2症例を経験した. 本合併症を術前に予測し, 回避する確実な方法が確立されていない現在, 術中の迅速な判断と適切な処置が重要であると考えられたので, われわれの経験した症例を呈示すると共に, 若干の文献的考察を加えて報告する. Stanford A型大動脈解離の急性期手術時の逆行性送血に伴った偽腔の拡大による真腔閉鎖は, まれにみる重篤な合併症である. 最近われわれは, かかる合併症の2症例を経験し, 救命しえたので報告する. 「症例」症例1:41歳, 男性. 主訴:前胸部痛. 現病歴:平成4年8月25日, 前胸部に激痛が出現し近医に搬送された. 胸部CT検査にて急性大動脈解離と診断され, ショック状態に陥ったために当院救急部に転送された. |