Abstract : |
continuous warm blood cardioplegia(CWBCP)と従来の心筋保護法を比較し, 臨床的に検討した. 対象は, 冠状動脈バイパス手術症例のうち1991年12月から1992年9月までに中等度低体温体外循環下にintermittent cold blood cardioplegiaを使用したC群(48例)と, 1992年10月から1993年6月までに常温体外循環下にCWBCPを使用したW群(48例)である. これら2群を術前, 術中, 術後の諸因子及び臨床像について比較検討を行った. 手術死亡は両群とも無かった. 脳血管障害は各群とも2例で差は無かった. 大動脈遮断解除後の洞調律自然回復率は, C群8.3%, W群85.4%とW群で有意に高かった(p<0.01). 術後6時間目のドーパミンの使用量は, C群4.8±3.0μg/kg/min, W群3.3±2.5μg/kg/minとW群で有意に少なかった(p<0.01). また人工心肺離脱時に緊急IABPを行った例は, C群で6例(12.5%)であったのに対し, W群では皆無であり(p<0.05), W群における血行動態的安定性が認められた. 体外循環中の最高カリウム濃度は, C群4.39±0.50mEq/l, W群5.67±0.96mEq/lとW群で有意に高くなったが, 限外濾過の併用で十分対処できた. CWBCPの欠点は, 持続血流液が吻合操作の妨げになることであった. この場合, 持続注入を一時的に間欠的注入に変更することで対応したが, 心筋保護効果上臨床的に問題になることはなかった. 以上から, 常温体外循環におけるCWBCPの使用は臨床的に選択できる1つの補助手段となりうることが示された. (日本胸部外科学会雑誌1994;42:991-996) |