Authors : |
小林修一, 北村惣一郎, 河内寛治, 森田隆一, 谷口繁樹, 福富正明, 庭屋和夫, 坂口秀仁, 辻毅嗣 |
Abstract : |
冠状動脈3枝以上の多枝バイパス術において順行性間欠的保護液注入のみで心筋保護を施行した100例(A群)と, これに逆行性持続冠灌流を加えた66例(A+R群)でその心筋保護効果を比較検討した. 両群間に平均年齢, 男女比, リスクファクター, 病変枝数, LMT病変率, 心筋梗塞の既往, 及び血行動態の諸指標に差はなかった. バイパス数はA群3.3本, A+R群3.6本(p<0.05), 内胸動脈使用数はA群1.2本, A+R群1.4本(p<0.05), 大動脈遮断時間はA群114分, A+R群138分(p<0.01)である. 術後1日目のCK-MB値はA群38IU/L, A+R群25IU/L(p<0.05), 再灌流後3時間目での左室仕事率はA群33g・min/m2, A+R群43g/min/m2(p<0.05)であった. 術後カテコールアミンの最大使用量は2群間で差はなかった. 体外循環離脱時にIABPを必要とした例はA群11例(11%), A+R群2例(3%)(p<0.05)であった. 死亡数はA群2例(2%), A+R群1例(1. 5%)で差はなかった. 以上の所見により順行性間欠的心筋保護液注入に逆行性持続冠灌流を付け加えることにより多枝冠状動脈バイパス術時の心筋保護がより安全により効果的に施行できると考え, 現時点では本法をルーチンに用いるに到っている. (日本胸部外科学会雑誌1994;42:997-1002) |