アブストラクト(42巻7号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 実験的心筋梗塞における間歇的冠静脈洞閉塞法による自己血灌流(ICSR)の心機能改善に及ぼす影響-ICSOを用いた新しい試み-
Subtitle :
Authors : 金沢守
Authors(kana) :
Organization : 山口大学医学部第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 42
Number : 7
Page : 1007-1015
Year/Month : 1994 / 7
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : Intermittent coronary sinus occlusion(ICSO)を用いた新しい試みとしてバルーンの閉塞, 開放に同期して, 冠静脈洞より逆行性に自己血を流し心筋保護を計るintermittent coronary sinus retroperfusion(ICSR)の有用性を全般的及び局所的心機能の改善より検討した. 雑種成犬14頭をICSR群(7頭), Control群(7頭)に分け全身麻酔で開胸した. ICSRは第1対角枝の分枝する直前で左冠状動脈前下行枝を結紮後15分より135分までの120分間行われた. 全般的な心機能の指標として, Emax, Loop area, LV圧, LVdp/dt, 心拍出量を計測した. 更に局所壁運動の評価のためcrystalをLAD支配領域と左冠動脈回旋枝支配領域の心筋内に, 一対ずつ植え込んだ. それぞれの測定はpreparation終了時, LAD結紮後15, 30, 45, 75, 135分に行われた. 各々の値はLAD結紮後15分値を100%として表現された. EmaxはICSR群ではLAD結紮後75分で126.6±23%であったのに対し, Control群では84.5±40%であった. EmaxはICSR群がControl群より有意に改善した(p<0.05). 左室収縮期圧, LV-dp/dtもLAD結紮後75分値においてControl群に比して有意に改善した(p<0.01). その他のパラメーターにおいても有意差はないもののICSR群がControl群より良好であった. 局所的な心機能ではICSR群7頭中, 3頭にparadoxical motionの改善を認めた. 実験終了後に採取したLAD領域の心筋に組織学的にwaviness, 水腫を認めたが, 静脈壁構造の破壊を思わせる所見は認められなかった. これに対しControl群ではLAD結紮により心機能は低下し, 全般的, 局所的, 両心機能ともその後改善することなく経過した. 組織学的所見でも, 静脈内の赤血球の連銭形成を多く認めた. 以上よりLAD結紮により作成された急性心筋虚血に対しICSRにより全般的及び局所的心機能を改善した. ICSRは急性心筋虚血保護効果があると判断された. (日本胸部外科学会雑誌1994;42:1007-1015)
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 急性心筋虚血, 逆行性冠静脈灌流, 間歇的冠静脈洞閉塞法
このページの一番上へ