Authors : |
田中佐登司, 八田光弘, 北村昌也, 大塚吾郎, 島村吉衛, 西田博, 遠藤真弘, 橋本明政, 小柳仁 |
Abstract : |
1981年1月より1993年3月まで当科において外科治療を施行した短絡疾患に合併した感染性心内膜炎(Infective Endocarditis:IE)21例を対象とし, 基礎短絡疾患, 起炎菌, 術前後の合併症発生頻度, 短絡部位と感染病変の局在部位. 手術方法と成績について検討した. 基礎短絡疾患は心室中隔欠損症(VSD)15例(71.5%), 動脈管開存症(PDA)2例(9.5%), ファロー四徴症(TF)2例(9.5%), 不完全型心内膜床欠損症(IECD)2例(9.5%)であった. 起炎菌はStreptococcus11例(52.4%), Staphylococcus2例(9.5%), グラム陰性桿菌2例(9.5%), 不明6例(28.6%)であった. 術前塞栓症は5例(23.8%)に合併し, 腎梗塞4例, 肝梗塞1例, 四肢血管塞栓2例, 肺塞栓1例であった. 基礎短絡疾患とIE病変の局在との関係は, VSDでは15例中, 左心系11例, 右心系3例, 両心系に1例IE病変が認められた. PDA, IECDではそれぞれ左心系に2例IE病変が局在したのに対し, TFでは2例中, 左心系に1例, 両心系に1例IE病変が認められた. 施行術式は大動脈弁置換術17例, 僧帽弁置換術3例, 三尖弁形成術2例, 三尖弁輪形成術1例, 肺動脈弁切除術2例であった. 手術成績は, 早期死亡1例(敗血症)を認めたのみで再手術は認めなかった. 遠隔成績は平均観察期間8.03年で生存率95.2%と極めて良好であった. 短絡疾患に合併したIEは, その短絡血流による乱流発生部位に高率に発生し, 速やかな外科治療が必要と思われた. 短絡疾患に合併したIE病変は両心系に存在する例もあり, 術前必ず両心系とも精査することが望ましい. (日本胸部外科学会雑誌1994:42:1032-1037) |