Abstract : |
当科で積極的に遊離動脈グラフト(FAG)の使用を開始した1991年から1993年までの3年間に施行された単独冠状動脈バイパス手術症例中FAGを用いた39例につき症例背景, 手術成績, グラフト開存率を検討した. 使用したFAGは, 主に右内胸動脈(RITA:36本38枝)を使用し, 他に左内胸動脈(LITA:1本), 右胃大網動脈(GEA:4本;1例ではGEAを2分割し2本のfree GEA)を用いた. 全39例中34例ではFAGの中枢側吻合を, 末梢側吻合に先んじて大動脈完全遮断下に上行大動脈へ吻合した. 残り5例中3例ではグラフトの長さが不十分で上行大動脈には届かなかったため, 2例では右冠状動脈(RCA)へバイパスした大伏在静脈(SVG)へ, 他の1例ではRCAへ中枢側吻合をおいた. 両側ITA使用は29例(74%), 両側ITAとGEAの3本のAGを用いた症例は10例(26%)で, AGのみで手術が行えた症例は28例(72%)であった. これら39例の手術成績は極めて良好で, 大動脈遮断時間は平均74.6分, IABPの使用3例, 周術期心筋梗塞(PMI)の発生1例であった. 術後早期グラフト開存率は100%であり, 平均27ヵ月(13ヵ月~46ヵ月)の観察期間で, 新冠状動脈病変による狭心症を1例に認めたが, FAGに起因した狭心症の再発を認めていない. 以上より本邦人においてもFAGの長期遠隔成績に期待がもてるものと考え, 今後も積極的にFAGを使用するつもりである. (日本胸部外科学会雑誌1994;42:2185-2192) |