Abstract : |
1972年から1993年までの食道癌の切除剖検例43例を対象に姑息切除例(15例)と根治切除例(28例)とに分け, 転移様式につき検討した. 性別は男性41例, 女性2例, 年齢は平均59.5歳, 癌の主占居部位は頸部1例, 胸部40例(Iu3例, Im28例, Ei9例), 腹部2例, 組織型は扁平上皮癌が42例(高分化型13例, 中分化型25例, 低分化型4例), 腺扁平上皮癌が1例であった. 病期はstage 0が2例, I1例, III13例, IV27例であった. 姑息切除の理由は主病巣の遺残が最も多く8例(53%)であり, 部位は気管・気管支6例, 大動脈2例で, 他はリンパ節遺残の3例(20%), 口側断端(+)3例(20%), 遠隔臓器転移(副腎)と腹膜播種が併存したものが1例(7%)であった. 姑息切除例の剖検時転移部位は延べ数で遠隔臓器が14例(94%), リンパ節11例(73%), 局所11例(73%), 播種9例(60%)と, 特に遠隔臓器への転移の進展が強かった. 根治切除例では初回再発部位は延べ数でリンパ節が20例(71%)と最も多く, 次いで局所9例(32%), 遠隔臓器8例(28%), 播種5例(18%)であった. しかるに剖検時転移部位は, リンパ節が24例(86%), 遠隔臓器20例(71%), 局所15例(54%), 播種11例(39%)で特に遠隔臓器, 播種への進展が強かった. リンパ節単独再発例(10例)でも剖検時には9例(90%)に遠隔臓器への転移が見られた. 姑息切除例, 根治切除例ともに転移は遠隔臓器への進展が強いことから, 今後の食道癌の治療の方向として従来より重視されてきたリンパ節転移に加え, 遠隔臓器転移をも標的とする治療法が重要である. (日本胸部外科学会雑誌1994;42:2193-2199) |