Abstract : |
心筋梗塞後左心室瘤や, 急性心筋梗塞後心室中隔穿孔で, パッチを左心室内腔に縫着し, 左心室を再構築する方法が広く行われている. しかし, パッチの大きさに対する明確な基準はなく, 術者の経験と勘によって作成していることが多い. われわれは, パッチ縫合予定部の左心室のサイズを基準としたパッチサイズの算定方法を考案した. 過去3年間で5例に応用し良好な結果が得られた. パッチの縫合線は, 収縮する領域(機能部)と梗塞部との境界となる. 第一斜位30°の左室造影で, 前壁の境界をA点, 後壁の境界をB点として, ABの長さaを基準とした. aは収縮期でも拡張期でもほぼ同じ値となるが, 異なる場合はその平均とした. また, 第一斜位30°で見たときのパッチの長さをlとした. 左心室瘤では, パッチをa/2<l≦πa/2の範囲としたが, 特に機能部が瘤によって拡大している時は, a/2<l<aとし, 左心室容量と形態を心筋梗塞発症前の状態に近づけるように再構築した. これに対して, 心室中隔穿孔では, 梗塞急性期には左室容量の代償性増加を伴っていないので, 機能部の容積を維持するには, パッチはaより大きくすることが必要で, a<l≦πa/2の範囲とした. 完成後の左心室の形態と容積を求め, そのサイズが適切かどうかを判定し最終的にパッチサイズを決定した. 心室頻拍合併の左心室瘤の1例, 心室中隔穿孔の4例に応用した. 術後の解析では, いずれも, 目標とした左心室の形態と容積, 心拍出量を示し, 左心室再構築におけるプランニングに非常に有効で, 手術成績向上にも寄与するものと思われた. |