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[I.緒言] 胸部外科手術の, 近年に於ける目ざましい發展は, 從來全く不可能と思われていた分野を, 着々開拓し, 醫學の夢を實現しつゝあるが, 此の素晴しい躍進は,その多くの部分を, 麻醉法の發達に負うことは, 衆知の事實である. 閉鎖循環式麻醉法を主流とする麻醉方式の發展は, 眞に顯箸ではあるが, 一方之等の方法が, 術中患者に如何なる病態生理學的影響を與えているかの, 根本的問題解明の業績は, 本邦に於いては勿論, 欧米に於いても比較的少ない. 此の事は, 術中に於ける諸檢索が, 甚だ難澁を極めることに, その多くの原因があると思われるが, 然し, 之等病態生理學的の明確な解明がなくては, 將來に於ける麻醉學の發展はなく, 又例え發展があったとしても, 病態生理の裏附けなき發展は, 多くの危檢を伴うことは明かである. 我々は, 過去數年來, 心肺性血液動態なる概念の下に, 心臓カセテリゼ一シヨンを應用して, 正常人及び諸種胸部疾患患者に於ける, 肺血流, 各部血壓, 血管抵抗, 心臓の行う仕事, 心力, 肺血量等を測定し, 心肺性血液動態の生理及び病態生理に就いて種々檢索を續けて來たが, 1）今囘は, 各種肺疾患及び心疾患の外科手術の機會を應用し, 手術前, 手術中の3～4の時期に就いて, 此の概念を展開し, 興味ある所見を得たので, 此處に發表する. |
