Abstract : |
[第1章 諸言] 肺切除術に於て古來から強調された最も重要な問題の一つは, 氣管支斷端を完全且つ永久的に閉鎖することである. 最近胸部外科領域の著しい發達に伴い, 肺切除例は急激に増加し, その手術手技もいろいろ工夫されて良好な手術成績を収めるようになつているが, 尚不快なる術後合併症の一つとして, 氣管支痩の發生が少なからず見られている. 氣管支痩の發生が術後經過を著しく遷延させるばかりでなく, 時には患者の生命をも脅かすものであることを考えると, 氣管支斷端の完全閉鎖が如何に重要な問題であるかは更めて贅言するまでもない. 肺切除術における肺門處理法が, 曾ての集束結紮(Mass Ligature)乃至絞扼結紮(Torniquet Ligature)からRienhoff(1936)の各個結紮(lndividual Ligature)に發展して始めて今日の略々安全な肺切除法の段階に達したことは周知のことであるが, 各個結紮における重要手技である氣管支斷端閉鎖法には就中注意が拂われて來たことは既述の通りである. 從って文獻上に見られる閉鎖法は20種類以上に及んでいるが, 方法の不備や手技の複雑のため自然に淘汰され, 現在迄存續して臨床上に用いられているものは, 氣管支斷端を結節縫合で閉鎖し, その上を肋膜で被覆するSweet氏法と, それに褥被縫合(Mattress Suture)を加えるOverholt, Bailey氏らの方法とに大別することが出來る. |