Abstract : |
[諸言] 近年醫學の各分野では, 從來の病理形態學の他に, 障害生理學が特に強調される様になつて, 時々刻々, 體内に起る諸變化を捕えて, 之に對處する様になつた. 手術という大きな人工的侵襲を人體に加える時, 體内で如何なる變化が起るかを知る事は, 手術の運行上最も大切な事と云わなければならない. 肺臓, 腎臓及び消化管が, 血液酸. 鹽基平衡を調節する重要な器官である事は, Gamble1)の著に示された模型圖にも見られる通り, よく知られた事實である. 從つて, 胸部手術中に起る血液酸鹽基平衡の歌態を知る事は, 心肺を中心とした障害生理を論ずる上に必要であるばかりでなく, 手術の管理上見逃す事の出來ない重要事である. 此の觀點から, 以下胸部手術中に於ける血液酸鹽基平衡及び之に關連した2, 3の呼吸機能に就いて觀察した知見を報告する. 酸・鹽基平衡障害には, 代謝性因子と呼吸性因子があるが, 代謝性因子として從來は, Van Slyke2)の言うAlkali reserveを定量して云々されて來たけれども, 最近はSinger&Hastings3)のBuffer Baseという概念が取り入れられる様になつた4). |