Abstract : |
近時肺結核の治療方法として肺切除術が盛んになると共に, 新鮮な切除病巣について病理學的並に細菌學的檢索がすすめられたが, 病巣を直接塗抹染色し抗酸性菌を認めるにも拘らず培養試驗や動物接種によつて結核菌の發育, 若くは結核症の發症を認めない揚合がかなりの數に昇ることがわかつてきた. これらの現象についてはMedier1)Beck2), D'Esopo3)4), Steele5), Steenken6)等の報告があり, 我國でも香川7), 東野8), 小川9)等の報告がある. 村松晴嵐荘に於ける成績も同様の傾向を示した10)11). このような事實に對しては化學療法劑の影響も考慮されるのであるが, 化學療法を行つたことのない孤立性病巣に於ても同樣な現象が認められるのであり, Dubos12)やHirsch13)のように乾酪巣内の物理化學的因子にその原因を求め研究を進めている人々もある. 著者は病巣の化學的性状と病巣内結核菌の培地上に於ける發育能力との間に何等か關係があるのではなかろうかと考え, 2, 3の試驗を實施してきたが, 無機燐の測定値が各病巣に於てかなり變動があるのに氣付いたので, これが病巣内結核菌の培地上に於ける發育性, 病巣の病理形態學的性状, 臨床症候並にレ線像所見から見た病巣の變化とどのような關連性があるかを考察した. |