Abstract : |
「第1章緒言」肺の呼吸運動の原動力は肋骨及び横隔膜の運動によつて與えられるものであるが, 若し肺に病的變化の存在する場合には, その病變の性状並に範圍により肺組織の彈力性に變化を來す爲に, 又縱隔洞に病的變化があるか否かにより, 或は肋膜に癒着があるか否か等によつて肋骨及び横隔膜の運動によつて與えられる肺の二つの運動即ち肺胞の膨張收縮運動及び肺組織の位置の移動遐動にも變化を來す事は想豫出來るのである. 一般に肺結核症に於て肺の病變部は呼吸運動が減弱すると言われ, 又肺尖に病巣があつても患側の横隔膜運動は弱くWilliams氏現象として可なり重要視されていた樣である. 一般に患側の呼吸運動が反對側に比較して減少するのは機械的障碍として理解出來るのであるが, 之が上述の諸因子の配列組合せ如何によつて亂される揚合がある事も理解出來る. 余はX線キモグラムにより患側横隔膜運運が健側より弱いものもたしかに多いが, 逆に患側横隔膜の呼吸運動の方が却つて健側より強い場合も可なりある事を發見し, Williams氏現象は診斷上左程價偵の高いものでない裏を證咀したが, 又肋骨の呼吸運動が弱くても肺實質の呼吸運動は強い場合もあり, 又その逆の揚合もあつて肋骨, 横隔膜及び肺の呼吸運動は常に平行するものではない事を知つた. |