Abstract : |
[緒言] 調節呼吸controlled respirationは, 氣管内麻醉時に行う特殊な人爲的換氣法で, 手術, 特に開胸手術時に應用して, 種々の利點を有することが知られている. 即ち, 生體の自發的呼吸運動を停止せしめ, 必要な換氣を完全に人爲的管理に委ねることによつて, 開胸によって招來される種々の程度の換氣障碍を防止し, 且つ又, 手術野を靜止せしめることによつて, 手術操作を容易にすることが出來る. このように, 調節呼吸は, 氣管内麻醉法の優れた利點を最大限に發揮し得る一手技であるが, その半面, 必然的に伴う非生理性のために, 病態生理學的に種々の問題が隨伴し, この點が積極的な臨床的應用を妨げる一因ともなつている. 從來諸家によつて指摘せられた主なる問題は, 先ず循環系に及ぼす障碍的影響(Haward34), Harmel13), Motley39), Cournand14))であり, 更に換氣量の調節性, 特に過換氣の危惧(Seevers46), Watrous58)), 麻醉深度判定の困難性(Noswarthy42)), 加壓による機械的肺損傷(Thornton51), 淺野3)), 等の諸點である. |