Abstract : |
「I. 緒言」我々が本研究に着手した動機は次の事實によるものである. 戰後我々のクリニックを訪れるマストパチーMastopathie患者の數が著しく増加したことゝ, その上に, 昭和18年副島謙博士がやはり我々のクリニックの材料で調査した際よりも, その罹患年齢が相當若くなつていること, 更にまたかゝる女性は例えば花柳界の人とか, 未亡人とか, 夫婦別居生活にある人とか, 或いは産兒調制を行つているとか, 端的に云つて, 性生活の充分に行われていない人が多い, ということに氣づき, 就中最後の性生活とマストパチーの發生に何等かの關係がないであろうか, その點を究明しようと考えたことにある. 1927年Moszkowiczは, それよりさき1860年Reclusが初めてその組織像を明かにして, Maladie cystique des mammellesなる獨立した疾患の存在を提唱し, 而もその後, その多種多様な組織像故に輿えられた10數種の名稱をもつこの疾患に, 生物學的或は成因的立場から, 内生殖腺の機能失調に起因するものと見做してマストパチーなる名稱を與えているが, 當時Moszkowiczは, いかなる内生殖腺の機能失調によるかは明かにすることができなかつた. |