Abstract : |
[第1章 緒言] 近年肺結核に對する肺切除術並びに化學療法が普及するに伴い, 肺結核の病理學的, 細菌學的研究は急速に進歩して来た. とくに長期化學療法を受けた閉鎖性病巣中の結核菌については, 塗抹標本で結核菌を認めても, 培養並びに動物接種では陰性を示すものが甚だ多いという事實が明らかにされ, これに關する報告は枚擧にいとまがない1)-8). 塗抹陽性, 培養陰性なる結核菌が如何なる意義を持つかということについてMc Dermott9), Yegian10), Dubos11)12), Steenken13), 植田14)等により種々の見解が發表されており, 又一方には培養方法の改良等15)16)が試みられているが未だ充分な解決を得ていない. 細菌がその培養條件によつて甚だしく原形と異つた種々の形態をとることは古くより知られており, 河合教授17)はアニリン色素加寒天培地に於ける各種細菌の異常形態について詳細な研究を行つており, 又, 同教授18)は細菌の異常形態と發育異常には密接な關係があり, 細菌の異常形態を見てその疾患の豫後を豫想することが出来ると述べている. 結核菌も又その環境(培養條件, 病巣の性状等)によつて種々の異常形態を示すことが認められている19)20)21). |