Abstract : |
[緒言] 近來, 麻醉學の進歩は外科手術に大きな飛躍をもたらしたが, 特に胸部外科に於ける氣管内麻醉法にその感が深い. 然し乍ら, この麻醉法には習熟した技術と正確な知識が必要であり, そのいずれが缺けても思わぬ事故を惹き起すものである. 麻醉中の事故については既に詳細な臨床的觀察が報告1), 2), されているが, その主なものゝ1つにAnoxiaがある. 即ち, Opium, Barbiturate等の前麻醉藥, 反び導入時の筋弛綏劑の過量投與による呼吸抑制, 挿管, 抜管時の迷走神經反射による聲門痙攣, 分泌物による氣道閉塞, 吸引時の無呼吸, 出血等により種々の程度のAnoxiaが惹起される. 更に之に手術操作の因子が加われば, Anoxiaによる生體反應の惡循環が助長されることは周知の事實である. かゝる見地からAuoxiaの病態生理の研究, 殊に呼吸, 循環系への影響の究明が最近特に注目されるに至った. Anoxiaに關する内外文獻はまことに枚擧に暇なく, 肺循環との關蓮に就いても多くの業績3)4)5)6)7)8)9)18)19)20)21)22)23)24)25)26)27)28)29)30)31)が發表されているが, いずれもAnoxiaが循環系に及ぼす影響の大きいことを示している. |