Abstract : |
[緒言(全編)] 胸部外科の長足な進歩に伴い, 胸腔内操作の機會が増加して來た. これと併行して, 術中の突然, 急激な血圧降下や不整脈或は稀に急性心動停止さえも招いた症例が數多く報告される樣になった1)2)3)4)5)6)7). この原因としては多くの揚合, 術中の大量出血及び換氣不全に伴うAnoxia或は心臓の樣な重要臓器への機械的刺戟によるものの他に胸腔内操作に伴い易い反射性因子があるものと解釋されて居り, この内の1つとしてVago-vagal Reflexが提唱されている. 抑々Vago-vagal Renex症候群とは一過性のものであり, 容易に恢復するため, 臨床上, 等閑視され勝ちのものであるが, 種々の惡條件が重なる場合には重篤な呼吸循環障害或は心動渟止さえも招來するものである. この樣な諸反射を防止しようとする試みはO'S-haughnessy8)以來, 多くの人々9)10)11)によつて行われており, 現在ではAtropin, Scopolaminが屡々予防措置として用いられている. 然し, これ等の前處置を行っていても尚, 胸腔内操作時の反射抑制は充分でない場合が多く12), 稀に, 心搏制止を招いた症例の報告も散見される7). |