Abstract : |
[第1章 いとぐち] 近年麻酔の進歩, 手術々式の改善, 術前術後の処置の適正等により胸部外科は著しく発達を来たし, 特に呼吸器系に対する外科的療法では, 肺の切除技術等は完成の域に達しているが, 肺以外の気管, 気管支の外科はなお未解決の分野である. 気管, 気管支に結核, 腫瘍, 外傷等の原因にて狹窄を来たした場合, その狹窄部を切除し直接吻合を行い得るものはよいが, それにはおのずから限度があり, こゝに移植による気管および気管支の再形成手術の必要性が生じて来る. 気管および気管支の外科に関する文獻としては, 1881年Gluckが動物実験にて犬を用い, 嚥下性肺炎予防のため頚部気管を切断して, その両断端を頚部に開口せしめ, 後に縫合閉鎖に成功したのが最古のものと云われ38), その後も主に頚部気管について研究されて来たが, 胸部気管にメスが加えられる様になつたのはごく最近で主に1948年以後である. Hodes21), Paulson30)等は気管, 気管支損傷にてやむなく肺切除を行つたことを報告し, Priest32)は気管支損傷後広範囲に無気肺を来たした症例を報告している. |