Abstract : |
[第I章 緒言] 氣管内麻酔法の完成によつて近年の胸部外科は飛躍的に進歩した. これは開胸操作中でも充分に02補給が出来, 氣道が確保されるためで, 且つ必要な場合は任意に呼吸を補助し, 又は入爲調節を行うことができるので, 心肺機能の管理上極めて有利である. 補助呼吸を行うに當つて, 從来用いられている補助呼吸の缺點として, 吸氣時は陽壓であるため02供給は充分に行われるが, 呼氣は自然呼出に委ねられるため炭酸ガスの排除が不十分で且つ循環系の負荷傾向を招くことがHumphrey3), Coryllos4), Beecher15), Taylor46), Ha ward51), Wilhelm32), Maloney69), Ankiney71), 等によつて報告されている. 一般に換氣機能が低下しているものは術前より循環負荷の状態にあるものが多いので, 長時間の陽壓補助呼吸は心不全を招く危險がある. 一方この様な循環系に對する負荷を輕減する目的で調節呼吸が行われているが, これは近年の筋弛緩劑の研究に負う所が大きいのは云うまでもない. 即ち人爲的に自然呼吸を停止させて調節呼吸を行う方法として, 1)充分な02を補給し, 過呼吸によるCarotid body apneaの状態の下で行うもの, 2)Hering breuer反射を應用せるもの, 及び3)筋弛緩劑によるものがあるが, 著者は主として後者の方法について研究した. |