Abstract : |
[I. まえがき] 肺切除術後, 大後出血を惹起する場合は循環虚脱等直接の危險を伴う他に種々なる排液の努力にもかゝわらず血胸を形成して, 感染, 瘻形成, 胼胝形成等不偸快な後遺症を殘すのが通例である. 後出血の原因については肋膜癒着剥離の如何, 胸壁血管特に肋間動脈の損傷, 肺門部肺血管の結紮不全, 肺門部氣管枝又は淋巴節血管の損傷, 出血性素因の存在等が考慮せられ, 又諸家の報告にもみるところであるが, 私はそれらの原因なく比較的簡單に行われた肺區域切除術後の大後出血2例の經驗にもとづき, 昭和29年6月より31月6月までに手術した肺葉切除及び區域切除術447例の再檢討を行い, 又最近諸種條件下における症例について術後胸腔内排除液の檢査を行つて, 後出血の原因につき考察したので報告する. [II. 症例] No.1:○谷, 31才, 會社事務員 既往症:昭和23年急性蟲垂炎にて蟲垂切除した他は特記裏項はない. 現病歴:昭和26年1月全身倦怠を訴えて某病院受診, 左肺尖部に結核性病榮を發見され, SM40g, PAS1200g併用して一應治癒とされ同年6月より復職. 昭和30年6月感冒氣味にて咳, 痰を訴え受診, 悪化のため某病院に入院. |