Abstract : |
[緒言] 結核に対する治療法の効果を真に判定する為には, その遠隔成績を見ることが必要なことは云うまでもない. しかしわが国の現状では遠隔成績の調査は必ずしも容易な業ではなく, 殊に最近の治療法たる肺切除術については, 近来漸く若干の報告を見始めたに過ぎない18)19)20)21). 一方赤血球凝集反応が, すでにMiddlebrook22)の予期した如く, 体内の結核菌が完全に被包化されるか, または絶滅された場合に陰性となり, 再燃に際して再び陽性となるものであるとすれば, 結核の治癒の有力な一判定法として, 遠隔成績の調査の際にも応用されてよいものではないかと思われる. しかしこの方面に関する本反応の研究は未だ乏しいように見受けられる. 著者はこの観点の下に, 肺切除術, 胸廓成形術, 及び一般内科的療法が行われて後長期間を経た症例に, 赤血球凝集反応を他の諸検査と併せ行つた. これら各療法の遠隔成績を評価することは本稿の目的ではなかったが, それらの血清学的にみた安定度の考察は行わざるを得なかつた. それは少数例による推論の危險は免れていないが, しかしその分析の結果が現今の各療法の一般的評価と必ずしも矛盾する所がなければ, 本反応の遠隔成績方面への応用の意義が認められるのではないかと考えた. |