Abstract : |
[第1章 緒言] 近年心臓外科手術の進歩に伴ない, 心腔内を一時的に無血状態として, 直視下心臓内手術を行うために種々なる方法が考案研究され, 最近は人工心肺がその完成の域に及んでいるが, 尚人為低体温法も捨てがたい価値を有している. 人為低体温法はBarber1)によれば1902年Kubiabokoが初めて実験して以来Dill, Hamilton, Elliot, 柳などにより研究され, 1950年Bigelow2)は初めて直視下心臓内手術への応用の可能性を示し, その後Lewis and Taufic3) Swan4) Bailey5)等によって臨床的にも応用されてきている. 木本外科教室においても数年来人工心肺と並んで全身低体温法並びに選択的脳潅流冷却法の研究, 及び臨床応用を行ってきた6.7.8.). 人為低体温法の際の循環動態の変化については従来Spurr9) Bigelow10) Hegnauer11)12) Prec and Rosenman13)等により研究されているが, これは主として全身低体温法に関するものであり, 又循環動態の考察も心臓機能の変化が中心となっていて, 循環系全体, 特に末梢循環系については余り観察されていなかった. |