Abstract : |
[第1章 緒言] 肺切除術後の合併症すなわち気管支瘻, 膿胸, 血胸, 瀦溜液吸収遷延等の発生については, 未だ多くの研究すべき問問が残されている. Bell1). 畑中2), 江草3)は, 術後の高度血胸, 長期滲出液瀦溜が, 残存肺再膨脹を不良ならしめ, ひいては諸種合併症を起す原因となり, また瀦溜液の吸収遷延は, 一般状態の回復を遷延せしめると述べている. 教室の伊藤4)は, 肺切除術後の胸腔の状態, 特に術後血胸, 肋膜炎について研究報告している. 高度の胸腔内変化は, 合併症の危險を増大し, 肺機能を障害する. 従つて, これが防止には, 術後の血胸, 肋膜炎を早期に適切に診断し, 治療することが必要である. この胸腔内変化は, 術後胸腔の経過を支配する多数の因子によるが, 術後比較的経過の浅い時期の瀦溜液の性状, 細胞の機能がその予後に関係することが少なくない.Monod5), Franz6)は長期瀦溜液の認められる場合は, 合併症を疑わなければならないと云い, 塩沢7), 入倉8)Chamberlain9)などは, 再膨張を良好ならしめるには, 先ず肺を圧迫する瀦溜液を除くべきであると主調している. |