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「緒言」肺切除術は, 近来肺結核症をおもな対象として発達普及し, その外科療法のうち安全度の高い優秀な手段として, 極めて重要な役割りを占めるにいたつたが, なお肺腫瘍, 肺化膿症, 気管支拡張症等その適応の範囲は狹くはない. しかし本手術の成績を左右する気管支瘻, 膿胸その他の不快な術後合併症も, いまだなお絶無ではない. 肺切除後の気管支瘻, 膿胸の問題については, 幾多先人の臨床的および実験的業績があり, 結核肺切除後の問題としては, 著者も先年来2, 3発表するところがあつた. すなわち, 所謂気管支瘻を, 断端瘻と肺瘻とに区分して考うべきこと, これら瘻と膿胸との間に存在する錯雑な因果あるいは先後関係を考慮すべきこと, 瘻や膿胸の潜在例に留意すべきこと, などであり, また, 断端瘻は気管支切断端の閉鎖処理操作との間に第一義的な関係があることも強調したところである. 気管支断端閉鎖の処理操作に関して今日一般に認められている見解は, (1)気管支断端組織の生活力特に血行をできるだけ温存するよう愛護的に操作すべきこと, またこの目的に適合する閉鎖方式が望ましいこと, (2)気管支壁は組織学的に治癒能力に乏しいゆえ, 断端には結合織性被覆あるいは結合織内埋没を行つて, 外側よりの結合織増殖による閉鎖の強化を図ることなどであろう. |
