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「第1章 緒言」手術適応が拡大されるに従い外科的侵襲に伴う急性肺水腫は最近とみに増加し, かつ予後の不良な点より重視されて来た. 本症の成因に関しては内外諸家の広汎な研究があり1)～7), その予防, 治療に関して種々論議されつゝある. 数年来, 数室においても肺水腫の一連の研究を行いつゝあるが, 協同研究者原田8)によると, 外科的侵襲に伴う肺水腫は脳傷害, 心肺性疾患等による所謂, 内科的領域における肺水腫とは異る点が明らかにされた. 著者は, この点に鑑み, 外科的急性肺水腫の成因を物質代謝の面より把握するため, 特に水分, 電解質の病態生理を明らかにせんとし, 臨床的, 実験的に検討を加えた. しかし本症が極めて急速な, しかも重篤な経過を辿るために臨床的な研究には種々困難な点があり, 実験的研究を主とし, 臨床的研究もあわせ行つた. 肺水腫の物質代謝を把握するには純碎な然も高度の肺水腫について検索するのが妥当であると考え, α-Naphthyl thiourea(ANTU)肺水腫をとりあげ, また発生因子を詳細に検討するため生体内肺葉潅流実験を行い, 2, 3の新知見を得たので報告する. |
