Abstract : |
「第1章 緒言」Cranley等16)は病理解剖に付された243例の大動脈瘤患者の統計から, 梅毒性胸部大動脈瘤に於ては症状発現後1年以内に約60%が死亡し, 2年後の死亡率は77%に達すると報告し, 又近年漸増の傾向にある動脈硬化症性大動脈瘤に因る死亡は梅毒性のものに比し更に早期に起ると述べている. その他Kampmeier31), Ester21)等の統計報告に微しても大動脈瘤の予後が非常に悪いことは明らかであり, 外科的治療を必須のものとしている. 最近大血管外科の進歩は著しく, 腹部大動脈瘤は勿論のこと19)47), 胸部大動脈瘤に於ても切除療法がほぼ確立せられ11)13)48)49), 本邦に於ても切除成功例の報告があるが, 胸部大動脈の血行遮断は生体に重大な影響を与える為, 嚢状動脈瘤で瘤嚢摘出, 側壁縫合が可能な場合4), 或は大動脈狹窄症に併発する動脈瘤で副血行が充分発達している場合22)42)56)の如きを除き, 低体温法36)或は更に体外循環等12)32)41)の応用を必要とし, 又病変が大動脈弓部以上にあつて腕頭動脈, 左総頸動脈等の血行遮断を要する場合は問題は更に複雑困難となる13)20). |