アブストラクト(8巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 食道噴門癌根治手術に際しての吻合に関する臨床的並に実験的研究
Subtitle :
Authors : 天海隆一郎, 林田健男
Authors(kana) :
Organization : 東京大学医学部分院外科
Journal : 日本胸部外科學會雜誌
Volume : 8
Number : 9
Page : 911-941
Year/Month : 1960 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 「まえおき」最近の麻醉学の進歩, 特に気管内麻醉の発達によつて開胸は殆ど危険なく安んじて行えるようになり, 食道噴門癌の根治手術も盛んに行われるようになつた. この際使用される手術術式は種々であるが, いずれの術式に於ても, 術後に最も懸念されることは, 第1に食道との吻合部に於ける縫合不全の危険であり, 次で吻合部の瘢痕性狭窄である. この中, 縫合不全による危険が大であつたことは, J.L.Collisの初期50例中12(1), Soloverの33例中11(中6死)2), Petrorskyの90例中17(全部死2))に見られており, 且つ手術死亡原因の過半数(たとえばFinstererの77例中57(3), Yudinの57例中28(3), J.L.Collisの26中12(1)を占めていたことからも明かで, これには, 食道が移動性がすくない上に漿膜を欠いていること, その筋外層が縱走していて縫合糸が確実に維持されにくいこと, 血行が乏しく而も副行枝が不十分なこと, 呼吸及び嚥下運動による動揺が絶えず吻合部に及んでその癒合に必要な静止状態を妨げていること等の解剖學的特殊性もさることながら, 蛋白質欠乏, ビタミン, 栄養障害等の全身的影響(Hess4)5), Hartzell et al6))や, 細菌問題(Daris7), Harper8), Blain et al9)), 腸管内圧の問題(Whipple10), Wangensteen et al11))等の局所的因子による縫合創治癒の遷延も大きな役割を演じていると考えられ, これ等の影響を除去防止するために, 解剖学的弱点に対して吻合部の被覆補強の如き手術手枝上の考案がなされているばかりでなく, 蛋白質を中心とする術前術後の全身的な栄養水分補給法の改善, 抗生物質並に化学療法の併用, 所謂閉鎖的乃至無菌的吻合術12)13), 術後吸引法等の工夫がなされて, その結果縫合不全の危険は大いに軽減され(たとえば前記J. L. Collisの後期の症例では100例中僅かに1(1))殆ど解決されたかに見えるが, 術後吻合部狹窄に関しては案外関心が持たれていず, 尚未解決な点がすくなくないように思われる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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