Abstract : |
「第1章 緒言」外科手術は, 手術野を直視下にして行うことが理想である. このことは, 心臓外科においても例外でなく, 心臓内に無血野を得ること, 即わち, 如何にして充分なる心血流遮断時間を得るかが第1の命題である. 1940年頃から抗生物質の発見, 麻酔の発達等は, 外科手術に急速な進歩を齊らした. 胸部外科手術の発展もこの例外ではない. しかし, 常温下における長時間の心血流の遮断は, 脳及び心筋の不可逆性変化を齎らすと言う余りにも大きい影響のあることから, "充分なる心血流遮断時間の獲得"を安全に遂行するために, 数多くの研究が行われてきた. 1937年Gibbon1)によつて着手された人工心肺装置の研究, 及びBigelow2. 3)が1950年に初めて低体温法を利用して行つた心血流遮断時間延長への試みは, 上記の命題に対する解答の2つの方向を示すものと言えよう. 低体温法は, このBigelowの試み以来, Lewis and Taufic4)5), Bailey6), Swan7)8)9), Hegnauer10)11)12)らによつてその研究が推進され, 実験的, 臨床的にも着々とその成果が収められている. |