Abstract : |
「I 緒言」前篇において, 静脈波の基礎的諸問題について検討し, 光電的方法によつて記録された静脈波は, 静脈還流の状態や, 心機能の変化等をよく現わしており, 静脈波の外科臨床面への応用性の高いことを知つた. この静脈波を外科臨床面に導入するにあたり, まず考えられることは, 全身麻酔時の状態把握への応用である. すなわち, 全身麻酔時には, 麻酔剤の心機能抑制, 呼吸の積局的管理, および筋弛緩剤の使用等, 静脈還流の主要な因子を人為的に規制する場合が多いので, 静脈系の循環動態を適確に把握する必要がある. それには静脈波が最も適しているのではないかと考えられる. したがつて後篇においては, 全身麻酔時の静脈波の変化を, 特に呼吸との関連を主にして検討した. そのほか, 循環系に著明な変化を現わしていると思われる特殊症例の静脈波についても検討した. その結果, 全身麻酔時, 特に無呼吸時および加圧呼吸時において, 静脈波の変化は特異的であり, 麻酔時の呼吸管理の指標として, 静脈波は大きな価値を有していることを知るとともに, 心臓に対する手術の効果を判定するうえに, 有力な指標となることを知つた. |