Abstract : |
「I. 緒言」最近の胸部外科の進歩発達は病態生理学に負う所が大である. 今日, 肺外科における手術適応の拡大に伴つて術中, 術後に生体の受ける手術侵襲も漸次大きくなり, 心肺生理学の立場からその動態を究明するとともに, それ等の体系化をはかることは手術の適応を更に拡大させ, 同時に術後管理の安全性を高めることに寄与している. ここに臨床上の重要なる意義が存する. 従来, 術中, 術後の心肺性動態を連続的に解明した研究はMair1), Siebecker2), Bjork3), 奥井4)らにより主として動脈血のガス代謝に就いて論じられており, いずれも低酸素血症を主徴とする変化を重視すべきことを強調している. 酸塩基平衡に就いては古くからAustin(1922)5), Cullen(1924)6), Stehle(1924)7)らにより開胸手術中の動態が究明され, 呼吸性アチドージスの出現が注目されていたが, 特に最近に至り, Beecher8), Etsten9), Gibbon10), Ellison11), Taylor12), 等により開胸手術時の酸塩基平衡の問題が種々の観点からとりあげられて来ている. |