Abstract : |
「第I章 緒言」近年いちぢるしく発展をとげた心臓外科とともに血管外科, とくに胸部大動脈を対象とした外科的治療法も, 代用血管の発達とともに大きな関心がもたれるようになつてきた. 胸部大動脈の手術治療の対象となるものは胸部大動脈瘤ならびに大動脈縮窄症などであるが, その発生部位においても必ずしも一定したものではなく, とくに頚動脈分岐部より中枢側に発生した場合, あるいは大動脈弓部にまたがるような場合には, 血流遮断上種々な考慮が必要である. このような場合, DeBakeyらはBypass-Shunt法を応用して上行大動脈から下行大動脈へ, さらに頚動脈へ代用血管を縫着して血流を維持せしめ, 罹患部の完全切除および血管移植後に上述のBypass-Shuntを二次的に除去するという長時間に亘る術式を報告しているが, 一次的に安全に切除手術を行う方法は現段階として極めて困難な状態にある. 著者は胸部大動脈手術に関し, 適切な手段を用いれば一次的に大動脈の切除移植が可能か否か, あるいは破裂に瀕した大動脈瘤に対して切除法にかわる次善の予防対策の可能性の有無などに関して実験的検索を行つた. |