Abstract : |
「第1章 緒言」最近における心臓外科の進歩は著しく, 低体温法, 人工心肺による体外循環法も確立し, 先天性心疾患の多くは容易かつ比較的安全に外科的に根治されるようになつた. 心臓外科の発展普及とともに手術適応も単純な病変より複雑な疾患へ, 先天性疾患より後天性疾患へと拡大されてきた. 後天性疾患のうち僧帽弁疾患, とくに狹窄症に対する交連切開術は手術手技も容易で成績も優秀で, 一般に広く普及しており, いわば心臓外科の基本的手術といえる. これに反して大動脈弁疾患は, その解剖学的形態, 血行動態の特異性のため僧帽弁疾患に比べると治療困難で, 手術手技上にも特殊の考按が必要とされる. 僧帽弁狹窄症に対する交連切開術の考按後まもなく, Bailey1), Harken2)らは大動脈弁狹窄症に対してもほゞ同様な手術手技を応用したが, 僧帽弁狹窄の場合に比べると成績は不良であつた. このためSwan3), Lewis4), Lillehei5)らは低体温法あるいは人工心肺装置による直視下手術を試み, 今日大動脈弁狹窄症の根治手術には直視下切開法が優先されるようになつた. |