Abstract : |
「第I章 緒言」近年, 麻酔学の発達によつて外科手術は長足の進歩を遂げ, 特に胸部外科領域に劃期的な発展を齎した. しかしながら反面, 開胸と言う特殊な侵襲によつて惹起される種々な合併症のうち, 術後肺水腫は, 所謂心肺性危機と言う言葉で表現される病態の一つとして, 発生機序の複雑性, 予防ならびに治療の困難な事, 予後不良な点等によつて最近重要視されている. 急性肺永腫は, すでに1752年Maloet1)によつて初めて独立疾患として記載され, 以来その成因, 予防・治療に関して広汎な研究が積まれている. 古くはWelch2)Cohnheim3)等の左心室不全の際, 高度の肺鬱血が本症の発生を促す, と言う所謂後方障害説, 又Anoxiaによる肺毛細管の透過性亢進が主体であるとするWarren4)Drinker5)Beznack6)長石7)佐川8)林9)等の実験的研究, 輸血或は輸液と肺水腫発生の関係を重要視したJordan10)葛西11)太田12)矢野13)Thorton14)遠山15)其の他出血との関係16)17)18)19), 或は神経因子を重要視したもの20)21)22)23), 等本症の成因に関しては多数の研究が積まれて来た. |