Abstract : |
「I 緒言」心電計の普及, 心電図の誘導法, 理論的解析の進歩などによつて, 一般心疾患の診断, 予後の判定などにおける心電図の価値は近年ますます増加の傾向が認められ, 外科領域特に心臓外科領域においても手術適応の決定, 手術効果の判定, 術中, 術後の管理などに対して心電図が不可欠のものであることは広く認められているところである. 一方, 近年における一般外科手術は外科的病態生理の研究, 術前, 術中, 術後における患者管理の進歩, 麻酔学の普及発展などと相俟つて手術適応の範囲が著しく拡大され, 従来手術不可能と考えられた種類の疾病, あるいは重症な症例にもメスが加えられるとともに, その手術侵襲の範囲も拡大され, さらに年令についても殆んど制限がなくなり, 幼小児の手術より老人の手術まで可能となつてきた現況である. これらの手術症例においては循環器系に何らかの変化をともなうことが多く, また手術にともない循環障害を起す可能性が強いので, 術中, 術後はもとより, 術前より循環系の状態なかんづく心機能を充分把握することが極めて重要なことであつて, このためにも心電図が広く用いられて来ている. |