Abstract : |
「第1章 緒言」最近, 体外循環は体液の高度の稀釈, 超低体温25)32)41)という方向へと発展し, 生体の限界が特異な循環動態または循環停止32)58)という面から考えられるようになつた. 人工心肺による体外循環においても, 回路充填に代用血漿を用いた稀釈低体温潅流法が1)5)16)17)18)30)34)51)61)70)71)研究され臨床に応用されており, それによつて大量の新鮮血液が節約になる6)15)51), 血清肝炎が避けられる, 微小循環におけるsludging, aggregation19)26)48)65)が改善される, 使用ヘパリン量が少くてすむなど種々の利点があげられている. 著者は, 人工心肺における稀釈低体温法のための潅流液の質と量を検討する目的で本実験を行つたものである. 吾々の心臓外科領域における対象が浮腫あるいは浮腫準備状態にあつて心不全を伴い, かつ, 長期間の食塩水分制限, ジギタリス投与49)62)68)などを行つているような患者が多いことを老えるならば, 稀釈低体温潅流における潅流液が, 代用血漿としての役割を果すとともに, このような病的な, あるいはiatrogenicな体液の変化の改善をかねた質のものでなければならない. したがつて, 潅流液の組成は厳重に選択処方されるべきであろう. |