Abstract : |
「緒言ならびに研究対象」緒言:近年, 気管内麻酔・輸血・補液・抗生物質の進歩により開胸手術が一般に安全容易になつた事と胸部レ線検査が検診, 診断に一般に行われる様になつて胸腔内腫瘍の発見が多くなつた事とが相まつて, 縦隔腫瘍もまた臨床家特に外科医の一般的関心の的となつた事は周知の如くである. 以来今日まで多数の臨床例, 剖検例の経験あるいは報告例をもとにした諸家の臨床的・病理学的検討によつて種別および組織学的所見, 種別的頻度, 好発部位, 発生母地, 年令, 性別的頻度, 臨床症状, レ線所見, 鑑別診断, 治療成績など相当明らかにされてきた1)~36), しかしながら縦隔腫瘍に含まれる腫瘤は極めて多種類にわたつており16)29), 以前考えられていた程に稀な疾患でないにしても今日日常の臨床上可成頻度の小さい疾患であつて, 現在尚症例報告の価値を有する種類の腫瘍は多く, 今後それら少ない頻度の腫瘍の縦隔における臨床・病理学的態度は検討を要するものであるが, 一方例えば比較的頻度の高い胸腺腫でも諸家の病理学的見解が一致しないなど37)38)39), 問題は少なくない. |