Abstract : |
「第1章 緒言」近年, 食道癌手術が漸く普遍化されつつあるが, 未だ他の消化管手術に比して手術死亡率も高率である. 食道癌根治手術は, 開胸, 開腹を必要とし胸廓系, 縦隔, 横隔膜並に腹腔内消化管への機械的侵襲が少くなく, 術後呼吸循環系に及ぼす影響は大きい. 術後合併症のうち, 気通内分泌物貯溜に始まる肺合併症は最も頻発する合併症であり, しかもその発生は食道癌に多い潜在性の代謝性障害, 循環障害を招来し重篤な結果をもたらすのでその病態の解明と対策は極めて重要である. 胸部手術においては, 多くにより術中, 術後の呼吸性Acidosis1.2.3.4)並に混合性Acidosis5.6.7.8.9.10)が報告され, また近年, 術後経過良好例に呼吸性Alkalosis11.12.13.14)をあげるものも少くないが, 食道癌根治手術における酸塩基平衝の研究は極めて少い. また酸塩基平衡の追求には, 従来Singer15)のNomogramが用ひられて来たが手術前後においてヘマトクリツトの大きく変動する場合は, 笹本, 片桐16)のNomogramがより適切といえよう. |