Abstract : |
「I 緒言」肺切除後, 追加手術を行わず, 残存肺の再膨脹ににより切除後死腔を満たした場合, 残存肺ないし対側肺に過膨脹, あるいは肺気腫の傾向があらわれると考えられて来た. 一方, 追加胸成術, 横隔膜神経捻挫術等の胸廓縮小術による死腔閉鎖は, 肺の過膨脹ないし肺気腫の発生を抑制しうるとしても, これらの手術は胸廓呼吸運動に恒久的な拘束性変化を与える欠点がある. 肺切除死腔の処理の問題については, Overholt1)はすでに1946年追加胸成の適応を論じて, 肺気腫化の抑制をその1つの目的としている. 肺切除後の肺機能について多くの検討がなされ, 追加胸成を施行しない方が, 術後の肺機能の温存に有利であることが立証されるに従つて, 死腔は極力肺の再膨脹によつて処理し, 胸廓に対する侵襲は極力避ける傾向となつている2)~9). 過膨脹肺の気腫化傾向については, Bjork10), Gaensler11)らは肺機能の立場から追加胸成を行うべきであると主張しているが, Cournand12), Overholt13), 笹本14), 古賀15), 延島9)らはいずれも残存肺の残気率は上昇するが, 肺内混合指数は正常又は低値を示すので, 肺気種の発生を疑問視して居り, 肺気腫の傾向の生じた場合にのみ, 追加胸成術を施行すべきであると主張している. |