Abstract : |
「第1章 緒言」最近における心臓外科の進歩はめざましく, 各種の先天性心疾患が比較的安全に根治しうるようになつた. しかしまだすべての心畸型が外科的療法の適応となつたわけではなく, また同じ疾患でもその程度, 合併症の有無によつて手術の安全性, 術後成績にもかなりの相違がある. たとえば左→右短絡を有する疾患で肺高血圧症を伴うものと伴わないものと比べると病態生理学的にも著明な差があるし, 臨床的にも全く異つた症候を呈してくる. また肺高血圧症を伴うようになると, 手術成績は極めて悪くなり, ある限界以上になると手術はかえつて禁忌となることさえある. したがつて手術の結果, 予後を推定して慎重に適応を決めなければならない. それには臨床検査により患者の心肺機能に関する正確なデータを集計, 検討し現段階においてもつとも妥当と考えられる治療方針を決定せねばならない. 先天性心疾患における循環障害はその原因となる畸型の多様性のため各種の疾患により, また同一疾患でも症例によつて異なり, その実態は極めて複雑であるが, 基本的には心内短絡を有するものと弁膜障害の場合とに分けられる. |