Abstract : |
「第1章 緒論」近年, 人工心肺装置及びそれを用いた体外循環の研究の進歩はめざましいものがあり, 種々の先天性, 後天性心大血管疾患の根治手術に応用され好結果をもたらしているが, その臨床応用の歴史は比較的新しく過去10数年来, ようやく一般的な普及を見るに至つたものである. こゝで体外循環研究について少しく歴史的考察を加うるに, 人工的な体外循環の概念自体はすでに1813年Le Galloisにより発表されており, 1885年にはvon Frey及びGruberが原理的には今日用いられているものと全く同様な人工心肺装置を考案している1). しかしその後, この分野の研究進度は遅々たるものであり, これは主として血液型及び血液凝固に関する知見の不足に基くものであつたが, これらの問題が次第に解明されるに至つて再び活発な研究が開始される様になつてきた. 即ち1937年にGibbon2)が直視下心臓内手術中の心肺機能を代行するものとして, 実用的な人工心肺装置を作成し, ついで1951年Dennis3)らによる臨床応用第1例, 1953年Gibbon4)による臨床応用成功第1例が報告されて以来, 今日までこの方面の研究は長足の進歩をとげるに至つている. |