Abstract : |
「第1章 緒言」1929年dos Santos27)によつて初めて沃化ナトリウムを用いた腹部大動脈造影の成功がもたらされ, 経腰的腹部大動脈造影法の嚆矢となり, 次いで1939年Castellanos16)は大腿動脈からカテーテルを挿入して大動脈内に造影剤を送る逆行性大動脈造影法を考案し発表した. 胸部大動脈に対する試みはこれよりやや遅れ, Nuvoli82)が直接穿刺法を行なつたのは1936年のことである. 本邦においては, 1932年塩田92), 1938年市川45)によつてそれぞれ経腰法, 逆行性カテーテル法が紹介されている. 以来大動脈造影は大動脈本幹およびその分枝の病的異常, 更に領域胸腹部臓器の疾患ことに腫瘍に対して非常に有力な診断法として賞用されるようになつた. また現在心血管外科の画期的な発展進歩によりこれらの領域においては必要欠くべからざる診断法となつている. 一方大動脈造影の合併症に眼を転ずれば, 造影開拓期に種々の偶発事故が多発するのは仕方ないこととしても, 現今の如く毒性の少ない造影剤を使用するようになつても, 時に重篤な合併症の発生がみられるのは遺憾である. 造影剤に対する過敏症, 造影手技の欠陥としての大動脈主要分枝損傷, 血管外造影剤漏出および後出血など主として手技上の合併症を除外しても, 少数例ではあるが造影剤自身の作用による合併症があり注目に値する. |