Abstract : |
「緒言」心臓外科の発展は目覚しいが, いまだ未開発の点も多い. 直視下心臓内手術の難易は完全なる無血視野で, しかもできるだけ長い遮断時間が得られるか否かにある. この目的のために低体温法とか人工心肺による体外循環とかが研究されている. 低体温法は安価で, しかも容易に管理ができる. 一般に心室細動が起りやすいとか, または遮断時間に限界があるとかいわれ, 現在では人工心肺法が多く行なわれている. 一方人工心肺法にも低体温法と異なる種々の問題がある. すなわち装置の複雑なこと, 血液の破壊とそれらによる生体の種々な反応など, まだまだ未解決のことも多い. 低体温法では体温下降に伴い代謝が低下し酸素消費量が減少するために, 酸素欠乏に対する耐性が得られるとの考えのもとに, 1949年Mc Quiston1)が始めて心臓手術, 特にフアロー氏病の短絡手術時の麻酔管理法として低体温法を適用して, 良好な成績を修めたと発表したのが心臓外科への応用の最初であつた. 1950年さらにBigelow2)3)らが低体温法による直視下心臓内手術の可能性についての研究を発表して以来, 幾多の研究成績が報告され, 1953年に始めてLewis&Taufic4)らによつて低体温法による心房中隔欠損症の直視下閉鎖術成功例が得られるに至つた. |